個人情報。

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これを書いた人はきっと警察が嫌いなんだね。

法律の専門家ではないが、個人情報保護法の例外の刑事訴訟法とさらにその例外の通信の秘密の話。

elaws.e-gov.go.jp

(目的)
第一条 この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。

以前、そこそこ年配の警察関係の方に話を聞いたことがある。

この法律は今からわずか15年ほど前にできた法律で、施行当時はかなり混乱があった。 個人情報を持っている業者はすべからく、一切情報を渡してはいけないものだと解釈されてしまい、 捜査に必要な情報を警察が問い合わせても全然教えてくれなかったと。

例外の話。以下の通り、「次に揚げる場合を除く」とあるので、以下の場合には提供してもよいことになる。

第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
一 法令に基づく場合
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

とはいえ、これだけを読んで実業務で今持っている情報をいくら警察や公的機関だからと言って他人に渡していいのかなんて判断はできない。

この辺りをカバーするために、各省庁はガイドラインを出している。

また、実際、個人情報は個人情報保護法だけに守られているわけではなく、番号法や、金融関連は別に金融商品取引法があったり、 法律そのものよりも自分の会社の管轄省庁のガイドラインを見たほうが良い。

http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/downloadfiles/2612hogo.pdf

ってことで刑事訴訟法がある「法令に基づく場合」を見てみる。

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上記のように、法律および条文までが書かれている。

elaws.e-gov.go.jp

第二百十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。

刑事訴訟法第218条はいわゆる令状での捜査。

この場合、これは「差し押さえ」になり企業側は命令として受け取ることになる。

第百九十七条 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。
○2 捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

こちらが一般的な捜査事項関連照会書に基づくもの。これは「報告」を求めるものであって強制力はない。

とはいえ、さすがに法律なので、国家公務員の守秘義務規定などには抵触しないようになっている。(らしい

ここで話がややこしくなるのが総務省が出しているガイドライン。

総務省|電気通信消費者情報コーナー|電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン

ここに以下のようにある。

法律上の照会権限を有する者からの照会(刑事訴訟法第 197 条第 2 項、少年法第 6 条の 4、弁護士法第 23 条の 2 第 2 項、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成 14 年法律第 26 号。以下「特定電子メール法」という。)第 29 条等)等がなされた場合においては、原則として照会に応じるべきであるが、電気通信事業者には通信の秘密を保護すべき義務もあることから、通信の秘密に属する事項(通信内容にとどまらず、通信当事者の住所・氏名、発受信場所、通信年月日等通信の構成要素及び通信回数等通信の存在の事実の有無を含む。)について提供することは原則として適当ではない。

(中略)

個々の通信と無関係かどうかは、照会の仕方によって変わってくる場合があり、照会の過程でその対象が個々の通信に密接に関係することがうかがえるときには、通信の秘密として扱うのが適当である。
いずれの場合においても、本人等の権利利益を不当に侵害することのないよう提供
等に応じるのは、令状や照会書等で特定された部分に限定する等提供の趣旨に即して必要最小限の範囲とすべきであり、一般的網羅的な提供は適当ではない。 

通信の秘密の保護のために、いくつかの法律においては提供が適当でない、とする見解。

これは、憲法の「通信の秘密は、これを侵してはならない。」がめっちゃ強いから。

そしてその通信の秘密とは「個々の通信に密接に関係することがうかがえる」場合。 が、「趣旨に即して必要最小限の範囲」の妥当性の判断にはリスクが高い。

自分の会社の管轄省庁のガイドラインを見たほうが良い、のは確かなのだが、 これだけ各会社が多角化しており、従うべきガイドラインが一つでではないため、明確に「適当ではない」というのはなかなか強く、通信の秘密にかかわるものは照会では出せないのが多分一般的。

大した結論はないけれども、警察庁も昔からこういうのを出したりしてる。 https://www.npa.go.jp/pdc/notification/keiji/keiki/keiki19991207.pdf

ちなみにLINEは透明性レポートを出している。 linecorp.com